Career Terraceの学生が農林水産省庁舎内「あふ食堂」を取材しました

Webマガジン「Mogunity」Vol.2

2023/06/21

キャリア支援・国際交流

OVERVIEW

私たちMogunity(モグニティ)は、食×政策×キャリアの観点から企業や自治体が運営する特色のある食堂の背景やこだわりを取材し、Webマガジンという形で情報発信していく団体です!私たちのマガジンが、大学生がキャリアを考える上での助けになれば幸いです。

今回「Mogunity」第2弾では「日本の第一次産業について考える」をテーマに、農林水産省庁舎内にある「あふ食堂」さんを訪問しました。
インタビューさせていただいたのは、あふ食堂を経営されている株式会社SANKO MARKETING FOODSと農林水産省の方々の計5名。中でも農林水産省職員の白石さん・竹内さんは日本初の官僚系YouTuberとしてご活躍中です!読者の皆様もBUZZ MAFFを一度は視聴したことがあるのではないでしょうか?
今回はそんな日本の食に携わる方々から、日本の農業・漁業・食に対して熱い思いを受け取りました。その思いはきっと読者の皆さんにも通じると思います。ぜひお読みください!

あふ食堂とは

あふ食堂は、「食の責任官庁 農林水産省」にふさわしい食堂づくりを目指し、国産食材、有機農産物等環境に配慮した食材、被災地産食材を積極的に使用したメニューを提供する農林水産省庁舎地下内にある食堂です。店内は木の温もりを感じる内装でゆったりとした雰囲気です。
「あふ」は、Agriculture(農業), Forestry(林業), Fisheries(漁業)and Food(食品) の頭文字から由来し、古語では、会ふ(出会う)、和ふ(混ぜ合わせる)、餐ふ(食事のもてなしをする)という意味を持ちます。
福島県産のお米、国産原料の味噌、沼津などから直送したお魚など国産食材をできるだけ使ったボリューム満点の料理を通じて産地の魅力を発信しています。
(右側より)
  • 農林水産省 大臣官房 参事官(経理担当) 坂内 啓二さん
  • コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科3年次 O.A
  • コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科3年次 Y.E
  • 農林水産省 大臣官房広報評価課広報室 広報企画第1係 白石 優生さん
  • (株)SANKO MARKETING FOODS あふ食堂店長 黒澤 成介さん
  • 農林水産省 大臣官房広報評価課広報室 広報企画第1係 竹内 佳穂さん
  • (株)SANKO MARKETING FOODS 開発部(店舗開発・建築・海外事業・VR事業)部長兼 官公庁・パスタ業態ユニット ユニット長 小川 直樹さん

1 食事について

あふ食堂で提供されるメニューカテゴリーは、スペシャル定食、あふ魚定食、日替定食、日替麺、週替丼、週替カレー、ヘルシーランチ、小鉢ランチの計8種類!
今回私たちは、スペシャル定食、あふ魚定食、日替定食をいただきました!

スペシャル定食

この日のメニューは、広島県産カキフライ定食(1,200円)

カキフライは、サクサクした衣とぷりぷりとした身のコントラストが絶妙です!
濃厚なタルタルソースがカキの風味を引き立てており、食べるとカキの旨味が口いっぱいに広がります。

魚のあら汁は、出汁がしっかり効いていて魚の身もふっくらしています。大根や人参などの野菜もたっぷり入っていて、栄養バランスもよさそう!

デザートのミルクムースはなめらかで、とろけるような食感と甘さ控えめなミルクの風味がとても美味しいです。上に乗った大納言のおかげで和風に仕上がっています。

日替定食 ハンバーグ定食~デミトマト定食~(850円)

ふわふわとしたハンバーグと、甘みと酸味のバランスが豊かな濃厚デミトマトソースの相性は抜群です。

あふ魚定食 福島阿武隈川メープルサーモンフライ定食~レモンタルタルソース~(950円)

肉厚なサーモンがサクサクふわふわに揚げられており、レモンタルタルソースでさわやかに食べられます。小鉢、お味噌汁、白ご飯のバランスも良く、活力がしっかりとつくようなボリューム感でした。

どのメニューもとても美味しく、あっという間に完食してしまいました!

一番人気のメニューを教えてください!

黒澤さん:人気メニューは定食ですね。昼食として利用される方が非常に多いので、ある程度ボリューム感があって、しっかりと午後の活力になるような定食の方が人気です。
魚とお肉両方用意しているのですが、やっぱりお肉の方が出ますね。
弊社が沼津から直送で仕入れた、沼津で有名な深海魚などを使った料理を出すと、魚の方も人気です。

食事に対する評判は?

白石さん:職員の立場から申し上げると、広報をしていて、あふ食堂さんが農林水産省らしさを出してくれているのがすごくいいところだなと思っています。

知り合いや取引先など、仕事に関わる外部の方に、「農林水産省の食堂ってどういう所ですか?」って聞かれたときに、[有機農産物を使っていて、魚も直送で来て…」みたいな感じで言えるのは、職員の職場アイデンティティの面でも、嬉しいなと感じています。

竹内さん:私も毎週届く日替わりメニューの連絡がいつも楽しみです。何度訪れても飽きないのが良い点だと思っています。

季節ごとにさまざまなフェアが行われているそうですね?

黒澤さん:全国各地とコラボしたメニューの開発も行っています。過去に青森県、鹿児島県、福島県などとコラボしています。

小川さん:基本は手が挙がった順で地域を選んでいますが、「産地のお困りごと」を解決すべくイベントを企画しています。産地の一番のお困りごとは『物の付加価値ってなかなか伝わらない』ということです。どう付加価値をつけてどう生産地を幸せにするかということを意識しています。

食材を選ぶ基準・食材への思いについて教えてください!

小川さん:有機野菜って身体に良くてすごく美味しいんですよ。有機野菜の人気を上げて、有機農業に取り組む農家さんに喜んでもらうためにも積極的に使用していますね。お米にも被災者支援として、被災地である福島県のお米を使うという特別な軸があります。良い食材を提供するというのが我々の使命だと思っています。

坂内さん:福島県産の米も当然安全だということは証明されているので、積極的に推奨しています。地下の食堂で取り扱うことで、「みんなで食べよう・支援しましょう」という流れを作りたいです。やはりこのようなミッションや政策と結びついた食堂はあまり他の所にはない大きな特徴だと思います。

2 運営するにあたっての経緯や取り組みについて

どの層のお客さんをターゲットにしているのですか?

小川さん:運営していくうえでのターゲットとして、農林水産省の職員さんだけで十分良いとは思います。ただ、ここの食堂は出口戦略として、有機野菜を豊富に使い、産地の取り組みをしっかり発信していくことがあふ食堂の一つの役目だと思ってるんですよね。
もちろん職員さんの福利厚生施設を支えることもとても必要なんですけど、それ+αの広報的な役目を担っていかなければならないと考えています。

坂内さん:国内の農家さんの食材を使ってこれだけおいしい物ができるというのをPRして、国産消費につなげたいと思っているので、「開かれた食堂」にしたいですね。

開店当初はどのような反応でしたか?

小川さん:オープン当初、「値段が高い・こんなの社員食堂じゃあり得ない」と言われました。ですが、農林水産省の職員の方々は食のプロなんですよね。我々が提供する商品の価値を理解していただいた結果、今の食堂の盛り上がりにつながったと思います。

食堂内には大画面のサイネージで全国の農水産業に関する映像が放映されており、印象的です。

食事を楽しみながら食に関する学びも深めることができる

竹内さん:サイネージの映像は農林水産省の各部署が作成した物です。
各映像を広報室に集め、省内外の方が来られた時にどのような映像を見てもらいたいかを相談・決定し、約2か月(ほど)の周期で流しています。
実際に食堂に来て、ご飯を食べている傍らで違う部署の方が作った映像を見ると、お互いの仕事についての理解も深まりますし、新たな気づきも生まれます。

3 農業に対する思い

農業を身近にするにはどうすればよいのでしょうか?

坂内さん:私自身としては農業をより身近な物にするためには、他人事ではなくて、自分事にするということをやらなければいけないと思っています。食事は誰でも行う最も重要なことの一つなので、食をより身近な物・自分事として捉えないといけないですね。

今までずっと農林水産省は儲かる農業・自給率向上を目指して、スマート農業など最先端の技術を取り入れ、効率化することで生産性を上げる施策に取り組んできました。ですが、儲からない農業、消費者の皆さんが身近な物として感じるような農業があってもいいのではないかと個人的には考えています。

例えば、「農福連携」のような福祉的な要素を持った農業やお年寄りの機能回復、障害のある方たちのリハビリという面でも、農業が非常に注目されています。また、実際に自分で作った物を食べてみたり、こだわりの農作物を食べてみたりすることが必要だと思います。どなたでも種を蒔き、大切に育てれば実るという経験を是非してほしいのです。

白石さん・竹内さんは広報室に所属されていますが、広報活動を行う上での思いや日本の第一次産業に対して課題を感じることはありますか?

白石さん:僕らはSNSに特化した業務を担当して3年目になりますが、この仕事を通じて、第一次産業の実態やどのように経営されているのか・どういう人たちが働いているのかが国民に知られていなさすぎると感じています。

例えばSNSをウォッチしていると、「あたりまえのことも知られていないんだ…」と悔しく感じることが本当に沢山あります。でも、それは当たり前のことですし、「いかに農林水産省が今まで発信してこなかったか」という僕らの責任だと思います。

昭和初期の時代と比べると一次産業の従事者もどんどん減って、今では人口の3.2%ほどしかいません。その分、狭い閉鎖的な世界になりやすいのかなとは感じています。ですが、私たちは農業・水産業・林業単体ではなく食という全人類に関わることを支えているので、それらについて逃げずにしっかり情報を出していかなくてはと考えています。
竹内さん:私は広報に就いてから半年が経って、自分が知っていることを前提に相手に伝えていこうとしても、なかなか伝わらないということに気付きました。また、問題発生時のみに急いで説明するような情報発信ではなく、普段から関わりをもっておくことで何かあったときに農林水産省を信じてもらえるような発信をしたいと考えています。

黒澤さんは食堂にて、小川さんは全国の飲食業界にて食と関わっています。その中で課題に感じることはありますか?

黒澤さん:私は食堂という出口で働いているので、生産者さんが大変な思いをして作ってくださった物を残して捨ててしまうことはどうしても許しがたく感じています。いかに美味しく召し上がっていただけるかという工夫を日々考えながら進めています。

小川さん:現在私たちがあふ食堂にて取り組んでいる、「農林水産省の食堂を受託している・福島県の米を使っている・有機のお野菜を積極的に使っている」ということが自己満足になってしまったら、なかなか商品の付加価値につながらないと思います。付加価値を伝えることは意外に難しく、だからこそ一つの目標にしています。

我々は現在、企業ミッションとして「生産地を幸せにする」ことを掲げています。「幸せにする」というのは結構難しい言葉で、幸せとは、収入なのか、まだ知られていない価値を伝えていくことなのか、畜産全体をもっと盛り上げることなのか・・・、人それぞれの幸せって違うと思うんですよね。

でも、いずれにしても我々としては漁業・農業従事者さんが「第一次産業をやっていてよかったな!」と思えるような世の中を作りたいですし、弊社の最大のミッションとして掲げています。

4 読者である大学生に向けて

竹内さんは一番大学生に年が近いですね。農林水産省を志した理由を教えてください。

竹内さん:私は恥ずかしながら、周りが就活しているので就活しなきゃっていう感じのタイプでした。 その後、お金を稼ぐためだけじゃなく他に何か理由が欲しいと思い、全ての人の為になる仕事がしたいと考え、国民のために働く公務員を志望しました。中でも農林水産省職員を希望したのは、私の中で一番大事なことであり、全ての人が生きていくうえで一番大事なことは「食べること」だと思い、省庁の中から農林水産省を選びました。

これから将来を考える大学生に知ってほしいこと

白石さん:我々が取り組んでいる農林水産省のYouTubeは、国家公務員の職員自身がYouTuberとして活動するという業務を日本で初めて認められた例です。私自身、自分はパイオニアだと思っています。

これからの時代は「超・超情報化社会」に入っていきます。 新聞やテレビよりもSNSから情報を入手することが一般的になっていくのでは、と感じています。皆さんはこれから就職活動をされると思いますが、どの仕事の業種でも絶対にSNSとかインターネットを使った情報発信力が大事になってくるので、 デジタルネイティブ世代の皆さんはそれだけ価値のある世代だと実感して、自信を持って就職してほしいですね。

坂内さん:「温故知新」という言葉のように、皆さんには最先端の物を取り入れつつ、古き良き伝統的な物も大切にしてほしいのです。今はちょうど伝統と先進技術の両方を活用できるタイミングにあるので、うまくミックスして新たな価値を創造していただきたいです。

日々食の現場に立たれているお二人から大学生に伝えたいことはありますか?

黒澤さん:大学生でアルバイトとして飲食業界を選ぶ方はいらっしゃると思うんですが、きっと飲食業界のイメージって「きつい・大変・忙しい」だと思うんです。ですが、今自分が勤めていると、「食って面白い」って思うんですよ。食に携わることで見える面白い世界や人との関わりが沢山あるので、ぜひ今学んでいることと+αで食について考えてみてほしいです。飲食業界は身近なことと結びつく仕事だと思うので、アルバイト選びで悩んでいる方がいたらぜひ飲食業界に挑戦してください。

小川さん:今日僕らの話聞いて、第一次産業って苦しいんだなっていうのは、少し感じてもらえたと思うんですね。それだけこの3年間、産地も我々企業もコロナでかなりしんどい思いをしました。産地が抱える課題に対して、弊社一社がここの食堂で産地の方々と一緒に啓蒙活動をしても、伝わる人数にはどうしても限界があるんです。だからこそ「あふ食堂」の取り組みを周りの人一人に伝えていただき、産地を理解する輪を広がってほしいです。

食の消費者としての大学生に伝えたいこと

坂内さん:自分の持論として、「人は食べる物でできている」と思うので、食べ物に対して気を配ってほしいです。例えば食品を買う際には、食品表示を見て、産地や食品添加物について自分の目で確かめて、自らが食べる物をしっかり選択してほしいのです。それが明日への糧にもなり、自分たちの健康につながっていくと思います。

編集後記

今回の取材を通じて、日本の生産者さんを支えるために農林水産省と(株)SANKO MARKETING FOODSの方々が両輪となり、「あふ食堂」が一つの舞台になって活動されていることを実感しました!


今回は食のプロフェッショナル集団である農林水産省・食堂運営に携わる「あふ食堂」のみなさんにお集まりいただき、食という軸を基に日本の一次産業・広報・経営・キャリアなど多分野のお話を伺うことができました。この「あふ食堂」は、Mogunityの企画を思いついた日からいつか絶対に訪問したいと考えていた場所でしたので、今回お話を伺うことができて万感の思いです。
インタビューを通して、食に携わる多くの方が日々努力していることを知り、その働きに敬意を感じました。また、私たち大学生も一消費者として、食に関する知識や意識を高めその流れに携わることで日本の食卓を支えることができると思います。
私も取材にて受け取った知見を「糧」にして、今まで以上に食について意識して過ごしていく所存です。読者の皆様にとってもこのウェブマガジンがきっかけや糧になれば幸いです。
改めて、このような貴重な機会をいただき大変うれしく思います。
ご協力いただきましたみなさん、本当にありがとうございました。(Y.E)

今回農林水産省・あふ食堂の皆様への取材を通して、日本の「食」に関して持たれている課題やその思いの強さに感銘を受けました。
お話を伺う前まで私は、食材の価値やその生産者の方の思いを常に考えながら食事をする消費者ではなかったと思います。しかし今回の取材が自分の意識を変えるきっかけになりました。私は1人暮らしでよくスーパーへ買い物に行きますが、産地や生産者など、以前より多くのことに目を向けるようになりました。
記事を読んでくださった少しでも多くの消費者が、日本の生産者の方や食材に対して、思いを馳せ、行動に移せるようになっていただければと思います。そして、私たち自身が日常生活で出会った方々にも、今回伺ったお話を伝えていきたいです。
取材の最後では、皆様にキャリアについてのお話をいただきました。私も将来について悩む部分が沢山ありますが、農林水産省・あふ食堂の方々のように誰かのために自分のやるべきことをしっかり持ち、実現させられるよう努力していきたいと思います。
今回の取材にご協力いただいた全ての皆様に厚く御礼申し上げます。(O.A)

企画・編集:立教大学コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科3年次 Y.E・O.A
撮影協力:立教大学コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科3年次 O.H

今回取材に伺った方々のSNSは以下の通りです。

●BUZZ MAFF 公式ホームページ https://www.maff.go.jp/j/pr/buzzmaff/

●あふ食堂インスタグラム https://www.instagram.com/afu_shokudo/

お問い合わせ

コミュニティ福祉学部インターンシップ・キャリア支援室

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