Career Terraceの学生が立教大学「第一食堂」を取材しました

Webマガジン「Mogunity」Vol.3

2025/03/31

キャリア支援・国際交流

OVERVIEW

私たちMogunity(モグニティ)は、食×政策×キャリアの観点から企業や自治体が運営する特色のある食堂の背景やこだわりを取材し、Webマガジンという形で情報発信していく団体です!私たちのマガジンが、大学生がキャリアを考える上での助けになれば幸いです。

今回「Mogunity」第3弾では「学生生活×食」をテーマに、私たち4年生の集大成として、長年立教生に寄り添ってきた本学職員の方および第一食堂様を取材させていただきました。
読者の皆様も第一食堂を一度は訪問したことがあるのではないでしょうか?
インタビューさせていただいたのは、第一食堂を運営されている株式会社平井の社長様と、立教大学学生部の方の2名。日々学生を食の面で支え続ける第一食堂、学生生活を豊かにする数々の政策や企画を推進する学生部、どちらもが学生コミュニティの場としても重要な役割を果たしています。

今回はそんな立教大学に携わる方々から、食堂への思いや学生の将来について熱い思いを受け取りました。その思いはきっと読者の皆さんにも通じると思います。ぜひお読みください!

第一食堂とは

1919年に完成した第一食堂は、レンガ造りの外観や漆喰をまとった壁面など美しい雰囲気をもつ学生食堂です。入口のドアの上にはラテン語で"食欲は理性に従うべし"と書かれています。これは哲学者キケロの「欲望は理性に従うべし」という言葉をもじったものです。
1950年に平井深雪さんが開業・第一食堂の業務委託を開始しました。1999年に孫にあたる平井秀樹さんが三代目に就任され、現在も運営を続けています。
(右側より)
  • コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科4年次 O.A
  • 株式会社平井 代表取締役 平井 秀樹さん
    立教大学の出身。卒業後他業種で勤務経験を積み、
    1999年に代表就任
  • 学生部学生課福利厚生グループ担当課長 長尾 研吉さん
    奨学金や学生食堂など学生の福利厚生全般を担当。
  • コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科4年次 Y.E

1 食事について

一番人気の「カツ丼」とは?

左:長嶋茂雄さんのサイン、右:古舘伊知郎さんのサイン

大学の学食は、学生たちの胃袋を支えるだけでなく、思い出の味としても長く語り継がれる存在です。第一食堂のカツ丼は、数々の著名な卒業生にも愛されてきました。アナウンサーの徳光和夫さんや古舘伊知郎さん、伝説的な野球選手・長嶋茂雄さんも、在学中に何度も食べた思い出の味だそうです。

平井さん:開店当初はカツ丼が40円、親子丼が30円、カレーライスが20円でした。当時とんかつはご馳走だったんだよね。当時はコンビニもなかったから、みんなが学食を利用して一日2000食とか出してたよ。今は1日550食くらいだけど、それでもカツ丼は人気ですね。
平井さん:うちはもうずっとダシの配合を変えていないんです。他のお店と比べると絶対に甘いと思うけど、だからこそ後を引くんです。卒業生はこの甘さが懐かしいって言うね。ホームカミングデー(卒業生のためのお祭り)の時1500食のうち350食がカツ丼になっちゃうくらい。

甘じょっぱいダシの香りが食欲をそそります。ひと口頬張ると、豚肉の旨みがじんわりと広がり、まろやかな卵とコクのあるタレが全体をバランスよくまとめています。
ボリュームがありながらも最後まで飽きのこない、食堂ならではの親しみやすい味わい。ほっとする美味しさが詰まった一杯です。

第一食堂のこだわり:シェフのおすすめメニューの誕生秘話

平井さん:学食の使命は、限られた昼休みの時間内で、栄養価が高く、手頃な価格で美味しい食事を提供することです。

学食では通常のメニューに加えて、日替わりメニューやシェフ特製のメニューが提供されています。
  • 日替わりメニュー
  • シェフのおすすめ
  • プレミアムパスタ
  • 本日の麺類
今回はシェフのおすすめメニューの「豚肉の白ワインソテー ライスボウル クリームソースがけ」をいただきました。

ひと口食べると、豚肉はほどよく弾力がありながらもやわらかく、噛むたびに白ワインの芳醇な香りと肉の旨みが広がります。ソースは、コクがありながらも軽やかで、豚肉の旨みを引き立てる絶妙なバランス。
シンプルながらも洗練された味わいで、食堂のメニューとは思えないほどの上品さ。ちょっと特別な気分を味わいたいときにぴったりの一品です。

このような特別な食事が提供されるようになった背景とは?

平井さん:女子学生の増加ですね。20年前は4割いかないくらいだったんだけど、今は6割くらいだよね。そこで、より女子学生が喜ぶようなメニューを増やすことにしました。普通の学食とは違うものを出したくて、それは全部職人に任せています。実際、通常メニューよりちょっと高くても、「シェフのおすすめを選ぶ学生が増えてきましたね。

第一食堂のメニューは独自に開発されているのでしょうか?

平井さん:4人の職人たちに任せています。今のチーフはイタリア料理歴30年のベテランで、ここに来て12年目かな。煮込み料理とかソテーとか、それぞれの強みを活かしたメニュー作りで、「手作り」にこだわっています。職人の個性を尊重しながらも、学食らしい価格で提供できるように工夫しています。メニューは基本的に1週間ごとに変更しているので、毎週毎週新しいものを提供できるように考えています。

昨今の物価高の中で安価で美味しい食事を提供するのは並大抵の努力ではないはずです。

平井さん:食材の仕入れには特に気を遣っていますね。八百屋さんや肉屋さんと交渉しながら、コストを抑えつつ高品質な食材を確保しています。オープンキッチンなのもこだわりの1つなんです。手作りの料理であることを、学生に直接見てもらって安心してもらうためにね。
最も嬉しいのは、学生から『美味しい』と言ってもらえることです。我々は、その言葉のために努力しています。

2 第一食堂の歴史や日々の取組について

平井さん:第一食堂の業務委託は昭和25年から始まりました。祖母の代から受け継ぎ、平井さんは3代目の25年目です。1918年に池袋キャンパスへ移転した際に、第一食堂に学食が設置されました。2002年までは、学食の2階にコックが住んでいて、1階には当時の運転手が住んでいたこともあったんですよ。昔は学食の隣に『山小屋』という部室棟があり、学生たちがそこで学食の食事を楽しんでいました。その後、学食の2階を改装し、パーティールームとして利用することになりました。11時半から13時半の間は、学生にも開放しています。

コロナ禍での変化を感じますか?

平井さん:コロナ禍の影響は今も続いていますね。完全オンライン授業の時は、食堂も閉鎖。その期間は、正直生きた心地がしなかったよ。最初の2年間は銀行から借金をしたし、国の援助がなかったら完全撤退していたかもね。実際、大学によっては学食が完全になくなったところもあるみたいですよ。
最近は通常の生活に戻りつつあるけど、学生の行動パターンは変化しましたね。昔は大学に長時間いて、夕方に食事を取る学生もいたけど、最近は授業が終わるとすぐ帰る学生が多いですね。昔のように、学生が食堂で長く過ごす文化が戻ってほしいけど、時代の変化に合わせた運営も必要だしね。

立教大学の学食が特別な理由とは?

長尾さん:立教大学では、学生部職員と池袋・新座両キャンパスすべての学食の運営業者様とそれぞれ毎月一回定例会を開き、意見交換を行っています。毎月密に意見交換している大学は珍しいかもしれません。他の大学では食堂の管理を施設部門が管轄しているところもありますが、立教大学では学食は第一義的に「学生のための空間」という考えがあるので、我々学生部が管轄をしています。
また、定期的に学生アンケートを実施し学生の声をしっかり拾い、また職員自身も実際に学食で食事をして、食堂の皆さんと一緒により良いサービスを提供することを考えています。

150周年記念メニュー「和風明太豚丼」誕生秘話

2024年、立教大学は創立150周年を迎えました。その記念の一環として、特別メニュー「和風明太豚丼」が登場。この企画はSNSでも話題となり、5日間で600食が完売しました。

なぜこのメニューが選ばれたのでしょうか?

平井さん:もともと人気のあったメニューで、これを150周年の特別メニューにすれば絶対に喜ばれると思ったんです。当初はカツ丼も候補に挙がったんだけど、調理に時間がかかりすぎるので、提供スピードと美味しさを両立できる豚丼に決定しました。

さらに、特別価格150円での提供という大胆な企画も実施されました。

長尾さん:池袋と新座すべての食堂業者様にご協力いただき実施しました。人気メニューやオリジナルプレート、ドリンクなど豊富なラインナップで、学生の皆さんにも大変好評でした。また、食堂業者様の負担にならないよう大学が一部補助を出しています。学生部として、150周年という節目に学生の皆さんに食の観点から特別なサービスを提供したかったこと、またこれを機に学食を普段利用しない学生にも来てもらうきっかけになればと考えました。利用してくれた学生がSNSで広めてくれたことも大変嬉しかったですね。これからも「学生のため」を第一に考え、いろいろと企画していく予定です。

この先平井さんが挑戦したいことや、第一食堂をどうしていきたいなどの展望はありますか?

平井さん:今のものを維持するっていうのはすごく大事だと思うんだけれど、その時代にあったような食堂にしていきたいし、皆に喜ばれる食事を作っていきたいなと思っています。今の立教生にも、将来的にこの味を懐かしんでもらえるような存在になれば嬉しいです。

3 読者である大学生に向けて

今の学生の食生活についての課題について感じることはありますか。

平井さん:栄養の偏りと欠食が気になりますね。お腹いっぱいになればいい、と考える学生も多いですが、せっかくの学食なので、美味しくて栄養のある食事を提供することが私たちの役割です。やっぱり自分も卒業生だし、親心のような学生を思う気持ちがあります。

これから社会へ羽ばたく学生たちに向けてお二人からエールのメッセージを!

長尾さん:大学の4年間は貴重な時間です。いろんな人と出会い、広い視野をもって様々な経験をしてほしいと思います。社会に出ても失敗を恐れず、まずはやってみるという姿勢で頑張ってください。自分の持っている強みが分かれば大きな自信になります。

平井さん:迷って当然だし、むしろやりたいことがすぐに決まっている方が珍しい。進路が決まらず焦る気持ちはよく分かるけど、決断を急ぐ必要はない。仕事の中で面白さを見出すこともあるし、転職が当たり前の時代。自分のペースで進んでください。

懐かしさが息づく立教大学の第一食堂——卒業生の心のふるさと

立教大学の第一食堂は、学生たちにとっての「日常」であり、卒業生にとっての「懐かしさ」が詰まった特別な場所です。ここでは、数々の世代を超えた思い出が育まれ、卒業後もその絆は続いていきます。
卒業生は、宴会や結婚披露宴の会場として利用することができます。立教を離れた後も、この食堂に集まり、卒業生同士の交流の場になっています。
平井さん:いつまでも懐かしい場所・懐かしい味であってほしいです。

長尾さん:第一食堂は卒業生にとっても大切な居場所としての役割を果たしています。

編集後記

記事を読んでくださり、ありがとうございました。これをもって、私たち Mogunity の活動は終了となります。この活動は(準備期間を含めると)大学2年の4月からスタートしました。前例がない中、手探りで試行錯誤を重ねながらの挑戦でしたが、多くの方々に支えられ、こうして無事に締めくくることができました。本当にありがとうございます。
私たちの目標は、学部・学科のテーマである「政策」への理解を深め、読者の皆様のキャリアに対する視野を広げることでした。このウェブマガジンを通じて、皆様は何を感じたでしょうか?
私は「政策とは、社会にある課題を発見し、解決へと導く行動」であり、「キャリアとは、自分の生活や自己実現と地続きにつながっているもの」だと考えています。こうした考えに至ったのも、立教大学での4年間の学びや出会いがあったからこそです。だからこそ、最後の取材先として立教大学の第一食堂を訪問できたことに、不思議な縁を感じています。このウェブマガジンが、読者の皆様にとって「政策」や「キャリア」を考えるきっかけになれば幸いです。改めて、これまで本当にありがとうございました。(Y.E)

卒業を間近に控えたこのタイミングで、本校の第一食堂を取材できたことは、私にとって大変貴重な経験となりました。振り返れば、新座キャンパスに通う私は在学中の4年間で第一食堂を訪れたのは数えるほど。だからこそ、ここで食事をする時間は、私にとって特別で非日常的なものに感じられていました。
今回の取材を通じて、そんな第一食堂の味や空間が、平井さんをはじめとする皆さんの手作りの温もりと、学生部との連携によって守られ、進化し続けてきたことに気づくことができました。改めて、その思いの詰まった食堂の魅力を実感するとともに、もっと多くの新座キャンパスの学生にも訪れてもらい、母校の歴史の味を体験してほしいと強く思いました。そして、いつか新座キャンパスにも第二の第一食堂が誕生することを密かに願っています(笑)。
卒業後は、平井さんや長尾さんからいただいた言葉を胸に、新社会人として一歩を踏み出します。でも、第一食堂のカツ丼の味、そしてこの空間の温かさを忘れることはありません。必ずまた戻ってきます。最後に、今回の取材にご協力いただいたすべての皆様に、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。(O.A)

企画・撮影・編集:立教大学コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科4年次 Y.E・O.A

【今回の取材先】立教大学 第一食堂

・第一食堂 https://www.rikkyo.ac.jp/campuslife/facilities/ikebukuro/dininghall.html

お問い合わせ

コミュニティ福祉学部インターンシップ・キャリア支援室

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