「地域に寄り添う」姿勢を大切に農山村地域再生のメカニズムを考察
コミュニティ福祉学研究科博士課程前期課程 東大陽さん
2026/03/31
大学院生・修了生
大学院に進学した理由を教えてください
私は、学部の4年間を信州大学(長野県)で過ごしました。大学院進学のきっかけとなったのは、学部生時代に友人たちと始めた地域づくりを目的とした学生活動にあります。活動フィールドの松本市奈川地区は、キャンパスのある松本市内で特に人口減少と高齢化が進んでいる地域であり、そこで農作業のお手伝いや休園した保育園を活用したイベント、地域のワークショップやイベントへの参加などを行いました。地域の方々との交流や貴重な経験に楽しさを感じる一方で、これから奈川地区のような農山村地域はどのようになっていくのだろうか、といった素朴な疑問も抱くようになりました。奈川地区では、実践的な活動だけでなく研究活動でもお世話になり、3年次のゼミ論では伝統芸能である「奈川獅子」の継承について、そして卒業論文では地区内にある滞在型市民農園(クラインガルテン)の利用実態についてまとめています。活動の実践に加えて、研究として地域を調査するなかで、次第に「研究する者」として地域に関わることの意義を感じ始めたこと、そして今後の農山村地域の持続性を考察するにあたり、より深く学問に取り組む必要性を感じたことが大学院に進学した大きな理由の1つです。その切り口として地域の「コミュニティ」が重要だと考え、コミュニティ福祉学研究科を志望しました。
大学院生としての生活について教えてください。
大学院1年次前期は、人文地理学や都市社会学、社会連帯経済論といった研究関心に近い講義を履修しながら、卒業論文の追加調査や学会発表の準備を行いました。1年次後期には、前期同様に講義の履修と並行して、修士論文に向けて研究課題の設定や先行研究の検討を行いました。2年次から本格的に修士論文に取り組み、2週間に1度の研究指導を受けながら、フィールドワークやデータ分析、論文執筆を行いました。他方で、大学院生活では学部のゼミにも参加していました。学部生とのディスカッションやフィールドでの作業を通して、自分の学部時代の経験とも重ねながら「大学生が地域に関わるとはどういうことか」について考える時間も多くなりました。ゼミ生のフィールドでの実践活動や個々人の研究活動への積極的な姿勢、それを楽しんでいる姿が、私自身の院生生活の活力にもつながっていたように思います。
どのような研究を行っていますか。研究の面白さについて教えてください。
研究テーマは「大都市との関係に着目した農山村地域の変容と再生」です。縮小社会とも表現される現代において、実際に農山村地域を訪れると人口減少や高齢化に加えて、大都市圏とのつながりのなかで観光を目的につくられた施設や町並みが残されていることに気がつきます。拡大・成長時代の論理に基づいてつくられたこれらのストックは現在では空き家・空き店舗化していたり、施設の運営が地域の行政や地域住民の負担となっていたりと、地域課題の1つとなっているケースも増えています。こうした問題意識から、大都市との関係に着目し、農山村地域の変容を人文地理学の視点で研究しています。具体的には「なぜ、その地域で、そのように、町並みの形成や施設の立地が生じたのか」から問いをはじめ、近年の移住者やその地域に関わる人々のライフコースを明らかにすることによって、拡大・成長社会から縮小社会への転換を背景とした農山村地域再生のメカニズムについて考察をしています。
研究の鍵概念としているライフコースとは、人々の「人生の空間的軌跡」です。人間は、様々な局面において与えられた選択肢の中からそれぞれの生き方を選択します。そして、多くの人が同じような選択をすれば、必然的に環境(地域)も変化を余儀なくされます。また、人間は与えられた制約を乗り越えて新たな可能性を生み出すこともできる。このように、人間の生き方をめぐる可能性と制約のせめぎ合いと地域の変化との相互作用を感じることができる点に研究の奥深さを感じています。
研究の鍵概念としているライフコースとは、人々の「人生の空間的軌跡」です。人間は、様々な局面において与えられた選択肢の中からそれぞれの生き方を選択します。そして、多くの人が同じような選択をすれば、必然的に環境(地域)も変化を余儀なくされます。また、人間は与えられた制約を乗り越えて新たな可能性を生み出すこともできる。このように、人間の生き方をめぐる可能性と制約のせめぎ合いと地域の変化との相互作用を感じることができる点に研究の奥深さを感じています。
コミュニティ福祉学研究科の特徴や魅力を教えてください。
コミュニティ福祉学研究科には、国内外でのフィールドワークを重視している研究者が多く在籍しています。そのため、それぞれが研究している事例について教わったり、調査手法としてのフィールドワークの助言を頂いたりします。自分の専攻する学問に加えて、多様な専門領域の研究者から様々な視点や専門的な助言、方法論の提示などを受けながら、自分自身の研究を深めることができることは大きな魅力です。もっとも、コミュニテュ福祉学研究科の研究者は、院生の問題関心やそれぞれのフィールドの実態について深く興味を持ってくださる方が多いです。時に気軽な情報交換をしたり、時に真剣にデータや概念の検討を行ったりと、院生と一緒になって考えてくれる時間が多いことも特徴の1つだと感じています。
最後に、大学院の勉強を将来どのように活かしたいと思いますか。
卒業後は、博士課程後期課程へ進学し研究を続けていきたいと考えています。上記の研究関心は、コミュニティ福祉学研究科での学びのなかで次第に定まりました。修士研究を執筆するなかで、「東京圏との距離」「ライフコース」「コミュニティ」「観光」「移住」は、これからの農山村再生を考察するにあたり重要となるキーワードであると感じています。コミュニティ福祉学研究科の先生たちから学んだ、研究する者として「地域(フィールド)に寄り添う」姿勢を大切に、今後も研究を継続していきたいです。
※インタビュー当時の情報です。