学ぶことで初めて見えるものがある。それを人のために活かす方法を考えていきましょう。

福祉学科 川村 岳人准教授(地域福祉、居住福祉)

2023/08/02

教員

研究内容

私はこれまで、高度経済成長期に建設された各地の大規模な公営住宅団地でフィールドワークを重ね、そこで求められるコミュニティのかたちやそれを組織化する方法を研究してきました。

私がこうしたテーマの研究に取り組むきっかけとなったのは、今から10年以上前、「孤独死」が深刻化する集合住宅団地の住民生活の実態を明らかにするための研究プロジェクトに誘われたことでした。当時、駆け出しの研究者であった私は、さまざまな社会階層の住民が混在する「一般的な」地域を想定するのではなく、公営住宅団地という具体的な場所を拠点に地域福祉研究を進めることに強く惹かれました。私の目には、特定の社会階層の人びとが集住する公営住宅団地は、地域福祉の課題やそれに対する先駆的な取り組みがダイナミックに立ちあらわれる場所であるように見えたからです。

こうした研究テーマは、必ずしも地域福祉の主流に位置づけられるものではありませんが、私が今日まで公営住宅団地でフィールドワークを続けてこられたのは、調査のたびに魅力的なソーシャルワーカーや住民の方々と出会い、感銘を受けながらいろいろな学びや気づきを得てきたからにほかなりません。
そうした成果は、たとえば以下のような形でまとめ発表しています。

  • 川村岳人(2022)「公営住宅の入居者による自治会活動への参加・不参加を規定する要因」『居住福祉研究』32:106-124.
  • 川村岳人(2019)「大規模公営住宅団地の入居者と周辺住民が交流する場の創出 : 推進組織の整備に着目して」『居住福祉研究』28:59-72.

学部での教育活動

学部では「社会福祉の原理と政策2」「社会福祉調査の基礎」を担当しています。
「社会福祉の原理と政策2」では,個々の人や世帯が抱える生活問題をそれ単体で捉えるのではなく,そうした問題が社会との関わりの中でどのようにして生み出されてきたのかを捉える視点を養うような授業を心がけています。
「社会福祉調査の基礎」では,特に統計分析の説明をする際は数学に苦手意識のある学生でも理解しやすいよう工夫しつつ,目的や状況に応じて適切な分析方法を選択する力や,分析結果を読み取る力を獲得することを重視しています。また,私自身が経験した調査の実例や苦労話,失敗談など,教科書には書かれていない「リアルな社会調査の実態」を伝えるようにしています。

研究指導

ところで、研究とは、あらかじめ答えが用意された問題を解くというより、自ら問いを立て、自分なりの答えを探究するところにその本質があるように思います。こうした認識のもと、研究指導に際しては、研究テーマを選ぶ段階から論文を書き上げるに至るまで、院生が主導的に研究活動を進められるよう、各自の経験や問題意識に寄り添いながら、それらをうまく研究に結びつけられるよう側面的にサポートすることを心がけています。たとえば、問いを立てる際は、自分が気になる現象を丁寧に観察し、既存の理論で説明できない部分がないかに着目するよう指導しています。こうした現象こそがオリジナルティのある問いを立てる契機になり得るからです。

また、社会調査を行おうとする院生に対しては、方法論のみならず、私自身が社会調査をする際に重視してきた視点や心構えも伝えるようにしています。たとえば、調査協力者とされる人びとは、いかなる義務も負っていないにもかかわらず、善意や親切心からあえて負担を引き受けてくださっています。社会調査を行う者は、このように自らが調査協力者に強いる負担について自覚的である必要があるでしょう。したがって、社会調査の実施を計画する場合は、それによってどのような研究結果が得られるかという学術的な観点だけでなく、最終的に専門職の実践や地域住民の活動にどのような還元や貢献ができるのかという点も視野に入れるよう伝えています。

受験生へのメッセージ

この社会には,さまざまな理由で生きづらさを抱えている人たちが多くいます。そうした人びとの問題を知ろうと努め,それを足がかりに社会の矛盾やほころびを見通し,さらにはよりよい社会を実現する方法を考える。
社会福祉を学ぶことで身につけた視点や問題意識は,卒業後に皆さんがどのような進路を選択しようとも,目指すべき方向性を示してくれると思います。
※インタビュー当時の情報です。

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