社会福祉のフィールドは無限です。この社会を変える担い手になってみませんか?

福祉学科 後藤広史教授(貧困・ホームレス問題、生活困窮者の「自立」支援)

2023/07/26

教員

研究内容

貧困状態にある人々、特にホームレス状態にある人々に対する支援にまつわる理念や方法について研究をしています。この領域に関心を持ったのきっかけは、学部4年生の時に行ったボランティア活動でした。そこで見た光景の非日常性や、社会福祉制度が掲げる理念と現実とのギャップに心を惹かれ、この領域の研究をするようになりました。研究を進めていくうちに、貧困問題はすべての社会福祉の問題の根源であるとの認識に至り、当時の関心を今も持ち続けて研究をしています。
現在行っている研究は大きく分けて2つです。
第一は、具体的な支援のフィールドに入り、そこで得られたデータを利用して現状を分析し、それを踏まえて支援の在り方を検討する研究です。具体的なフィールドとしては、ホームレス自立支援センターなどの機関や、いわゆる寄せ場(特に「山谷」)などの地域をベースに研究をしています。
第二は、ホームレス状態にある人々の現状や支援システムについての国際比較研究です。具体的な比較対象国はアメリカで、マイアミやフィラデルフィアの研究者と共同して研究を進めています。

主な研究業績は以下の通りです。
  • "Why Street Homelessness Has Decreased in Japan: A Comparison of Public Assistance in Japan and the US" European Journal of Homelessness 16(1) 81-99, 2022(Co-author: Dennis P. Culhane, Matthew D. Marr)
  • 「誰がホームレス状態から『自立』しているのか?ーホームレス自立支援センターの3年間の支援記録の分析から」『貧困研究』 (28)、2022年。

学部での研究活動

学部では「貧困に対する支援」を担当しています。日本は豊かな国だと思われがちですが、実は相対的貧困率で見てみると、諸外国と比べてその数値は決して低くありません。
この授業では、そのような貧困の現状、貧困状態にある人々の生活実態、そうした人々を支援する制度の歴史や仕組みについて説明し、制度・実践の両面からどのような取り組みが求められるかを一緒に考えていきます。
演習や卒業研究のゼミでは、貧困問題に関する文献購読・ホームレス状態にある人々の支援団体でのフィールドワークなどを通して、理論・実践の両面から理解を深め、その成果を論文にまとめていきます。

【過去の卒業研究のテーマ】
  • 住居喪失不安定就労者の現状と支援策の模索
  • 子どもの貧困を支援する援助者から見た支援の現状と課題
  • ホームレスと生活保護
  • ホームレス支援における民間支援団体と行政の協働

大学院での研究指導

担当する「生活困窮者支援特論」という科目では、貧困・生活困窮(者)というテーマをベースとしつつ、受講生の関心に合わせて書籍の輪読や論文の精読をしています。また、それらを通して得られた知見を踏まえて、受講生の論文のテーマの精緻化を図っています。論文のテーマは、学生それぞれが大事にしていることの表れであり、これがどう設定するかが良い論文を書く鍵となるので、それをうまく言語化できるようサポートすることを心がけています。

実践的な取り組み

上でも述べたように、学部時代から「山谷」と呼ばれた地域とそこで支援活動行っているNPOに関わってきました。実際にそこに住む人々や、NPOのサービスを利用する人々に調査を行って論文を書いてきました。そこでの調査は、約束した時間にインタビュイーが現れないなど計画通りにいかなかったりすることも多く、調査のテキストには書かれない様々な困難があります。ですが反面、だからこそわかる調査の楽しさや奥深さを知ることも多いです。コミュニティ福祉学研究科で学ぶ学生は、関わり方の濃淡はあれフィールドと接点を持ちながら研究をする人が多いと思います。社会福祉の現場で調査することの具体的な方法やそこで求められる姿勢といった点についても、自身の経験を通して伝えられたらと思います。

受験生へのメッセージ

「福祉」と聞くと、多くの人は社会的に弱い立場にある人々を対象にしたもの、というイメージを持つと思いますが、それは大きな誤解です。この社会に生きるすべての人は福祉と関わりながら生きています。その意味で、福祉はよりよい社会を構想するためのベースとなる学問であるといえます。
福祉を活かす道は無限にあります。本学科で学んだ学生が、従来の狭い意味での福祉の領域だけではなく、様々な場所でその知識や経験を活かして活躍してほしいと思っています。
※インタビュー当時の情報です。

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