私たちひとりひとりに関係する「福祉」~卒論執筆は自身の引っ掛かりを解きほぐす作業でした

福祉学科 菅野絵里菜さん

2024/05/09

在学生・卒業生

OVERVIEW

『「非モテ」「弱者男性」にみられる男性性の内面化』と題した卒業論文を執筆した福祉学科の菅野絵里菜さんにインタビューをしました。

なぜこのテーマで卒業論文を執筆したのか教えてください。

主に以下の3つ理由からテーマを決定しました。
  • 「ジェンダー問題」というと女性の問題が取り上げられがちですが、大学の講義や図書を通して、男性は女性に比べ社会的に孤立するリスクや自殺率が高いことを知り、男性の生きにくさに問題意識を抱きました。
    例えば、困っている子供に声をかけるだけで不審者扱いされる、平日昼間に公園を散歩するだけで偏見の目でみられることが多い等、私たち女性があまり感じない不自由があり、それは何に起因しているのか、調べてみたいと思いました。
  • 中学・高校時代、私は自分の容姿や言動に強い劣等感があり、「普通の女性」に対して強い(拗れた)憧れのようなものがありました。そのため、大変恥ずかしながらセクハラ問題や性被害を軽く捉えており、女性らしさを支持する風潮への異議等に対して反発的でした。
    もし自分が男性だったら、「理想的な男性像」には当てはまることができない「非モテ」というカテゴリーに属していた可能性があり、「セクハラごときで」「女はいいよな」という女性への意識を深く抱えていたのではないかと思います。そう考えると、「非モテ」や「弱者男性」というような蔑称で括られる人々が女性に対して持つこのような意識を一概に批判することはできず、この問題をより深く客観的に知りたいと考えるようになりました。
  • 大学生活の始まりは、初めての一人暮らし、コロナ禍のオンライン授業と、「孤立」や「排除」を自分事と感じる瞬間がありました。そのため、男性の中でも特に孤立のリスクが高いとされる「非モテ」に注目し、「高齢」「しょうがい」などといった名称で括られていない人の生きにくさも明らかにしたいと考えました。

一見「福祉」と関係がないテーマに思えるかもしれませんが、福祉学科での学びを踏まえ、4年間の集大成として決めたテーマです。

卒業論文を執筆してみてどうでしたか?

福祉学科では卒業論文は必修ではないのですが、「卒論」という大学生活でしか取り組めないことに挑戦してみたいと思いました。多くの文献を調べながら自分の興味関心を探求し論文を執筆することで、何か得るものがあるはずだという期待もありました。
執筆にはオンラインで閲覧できる論文のほか、大学図書館に収蔵されている文献をたくさん活用しました。福祉分野と関連の深い精神保健や人権的な課題に関するもの、心理学分野の発達心理学に関するもの、社会学分野の社会情勢の変化に関するものなど、様々な分野の論文・書籍に容易にアクセスできるのは総合大学ならではの強みだと感じました。
立教大学には2つのキャンパスそれぞれに充実した図書館があります。池袋キャンパスから図書を取り寄せたり、私が池袋キャンパスの図書館に足を運ぶなど2つのキャンパスの図書館を活用し、多角的に文献調査研究ができたと満足しています。文献調査を基に、一生懸命に研究テーマに関する仮説を立て、文章を推敲した経験は今後にも活かせると思っています。

指導教員川村先生と共に卒論に取り組んだ仲間

4年生になると大学に来る機会が減り、大学生活の印象が薄くなるというイメージを持たれがちですが、卒論執筆という大きなミッションと向き合うことで、充実して1年間を過ごすことができました。ひとり暮らしをしている私にとって、卒論のゼミ・執筆作業は、大学や人とのつながりを保ち孤立を予防する機能も果たしていました。卒論発表会等で他の学生と意見交換をして、それぞれの興味関心の背景や卒論執筆で得た知見を得ることができ、とても嬉しかったのを覚えています。
自分の経験から生まれた興味関心にとことん向き合った卒業論文は私の財産です。そして、1年間一緒に頑張ってきたゼミの仲間たちや先生は私にとってかけがえのない存在です。

受験生にメッセージをお願いします。

みなさんは「福祉」にどんなイメージを抱きますか?介護など、何か特別なことと感じているかもしれません。福祉学科では、社会福祉学を軸に、社会や教育、法律、経済など幅広い分野を学ぶことができます。
学際的(複数の学問分野にまたがること)な学びを深めることで、福祉とは「私たちの生活を支える営み」であり、「日常生活のあらゆるもの・こと」に繋がっていることを実感できると思います。
福祉学科では、将来福祉職を目指す学生には、国家資格「社会福祉士」取得のためのサポートが充実していますし、福祉職ではないキャリアに関心を持つ学生にもそれぞれの興味分野に合わせたキャリアデザインを応援してくださいます。
学生の興味関心は多種多様ですが、一人一人に優しく丁寧に向き合ってくださる先生方ばかりです。私自身も卒論執筆を通じて、学科のサポート体制や先生方が学生をしっかりと見てくださっているのを強く感じました。
人権や人々を取り巻く社会状況について学んだ経験は、卒業後に福祉職に進まなくても、人と関わることが避けられない社会で、必ず今後に活きるものだと思っています。
卒業後私は福祉職ではない企業に就職しますが、4年間の大学生活で学んだ「福祉マインド」をこれから社会でも活かしていきたいと思っています。
※インタビュー当時の情報です。

CATEGORY

このカテゴリの他の記事を見る

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。
ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。