一人ひとりの多様な背景を大切に、コミュニティで共に歩みましょう
福祉学科 門美由紀特任准教授(多文化ソーシャルワーク、地域福祉)
2026/03/30
教員
研究内容
現在の研究テーマに取り組むようになったのは、さかのぼって考えてみると大学時代のフランス文学科での学びはもちろんですが、民族舞踊研究会に所属していたことが一つのきっかけになったように思います。音楽や踊り、衣装の類似性から、国や地域を超えた人の移動や植民地支配の歴史を実感したり、宗教的背景や地政学的な脆弱性が舞踊に表現されていることに気づくなど、そこに暮らしてきた人々の営みを身近に感じるようになりました。
卒業後は銀行に就職し、国際部に配属されました。日々、様々な国・地域出身のスタッフと文化の違いについて意見交換する中で、“常識”の多様性に気づく機会が多くありました。その経験から、日本語教師として海外で暮らしてみたいという思いが芽生え、退職後に学び始めました。ちょうど国際交流協会の求人を見つけ、日本でもそうした仕事ができるならと応募し、働くことになりました。阪神・淡路大震災を契機に、地域における多文化共生の必要性が認識され始めた時期で、新設された地域国際課に配属されました。そこでは、自助グループの支援、日本語や子どもの学習支援を行う地域の民間団体との協働事業、多言語での行政用語の標準訳語集作成などに携わりました。
こうした経験を通して、地域におけるNPOやボランタリー組織の可能性を実感すると同時に、それらの活動が外国人住民の生活課題に対する施策へとつながっていく様子を目の当たりにし、より深く実践に関わるために理論化の学びが必要だと考え、30代で修士課程に進学しました。社会的排除に関する講義がきっかけとなり、博士後期課程では社会福祉を学び、地域福祉や多文化ソーシャルワークの実践及び研究へと展開していきました。
博士課程修了後は大学で実習担当助教として4年間勤務し、その後、再び国際交流協会に応募して5年半ほど働きました。ちょうど日本が外国人労働力の受け入れを積極的に進めることとした時期で、地方自治体に多言語相談窓口の設置や地域日本語教育の取り組みが求められていました。入職後半年も経たないうちにコロナ禍となり、長年ボランティア活動を行ってきた方々のオンライン活動継続支援等を、さらにその2年後にはウクライナ避難民支援に取り組むこととなりました。これまで研究してきた地域福祉や多文化ソーシャルワークを、まさに現場で実感し、実践する日々でした。
私の現在の研究テーマは「地域福祉」と「多文化コミュニティソーシャルワーク」です。日本に暮らす外国につながる方々にとって、同じ国・地域出身者で構成されるエスニック・コミュニティは心強い存在です。しかし、私たちは一人ひとりが多様性を有しているので「日本人—外国人or〇〇人」といった軸のみでコミュニティを捉えるのはもったいないと感じます。同じ地域に住む住民として、大学生として、同じ趣味を持つ者としてなど、共通点に目を向けることで、私たちはもっと多様なコミュニティを形成しうるし、そこに自分自身もありうるのではないでしょうか。コミュニティが複層的に存在し、一人ひとりが多様なコミュニティにありうる社会であれば、人はより柔軟にアイデンティティの多様性を受け止めることができ、自分のことも相手のことも大切にできるようになる、研究・実践を通してそのような社会を目指したいと思っています。
こうした考え方にたって現在、「多文化コミュニティソーシャルワーク」の概念化と、必要とされる価値・知識・スキルの具体化と体系化を検討しています。右傾化する社会の中で、私たちは何を大切に生きていくのか、どのような価値や理念を共有し社会に働きかけていくのかが問われています。海外で議論されているカルチュラル・コンピテンスやマイクロアグレッション、ホワイトネス、交差性といった概念をただ学ぶだけでなく、日本型の指標や方法を地域での実践を通して見える形にしていく必要があります。さらに、多文化共生からより射程を広げ、多様な主体がともにあるための地域福祉実践という視点で取り組んでいます。
卒業後は銀行に就職し、国際部に配属されました。日々、様々な国・地域出身のスタッフと文化の違いについて意見交換する中で、“常識”の多様性に気づく機会が多くありました。その経験から、日本語教師として海外で暮らしてみたいという思いが芽生え、退職後に学び始めました。ちょうど国際交流協会の求人を見つけ、日本でもそうした仕事ができるならと応募し、働くことになりました。阪神・淡路大震災を契機に、地域における多文化共生の必要性が認識され始めた時期で、新設された地域国際課に配属されました。そこでは、自助グループの支援、日本語や子どもの学習支援を行う地域の民間団体との協働事業、多言語での行政用語の標準訳語集作成などに携わりました。
こうした経験を通して、地域におけるNPOやボランタリー組織の可能性を実感すると同時に、それらの活動が外国人住民の生活課題に対する施策へとつながっていく様子を目の当たりにし、より深く実践に関わるために理論化の学びが必要だと考え、30代で修士課程に進学しました。社会的排除に関する講義がきっかけとなり、博士後期課程では社会福祉を学び、地域福祉や多文化ソーシャルワークの実践及び研究へと展開していきました。
博士課程修了後は大学で実習担当助教として4年間勤務し、その後、再び国際交流協会に応募して5年半ほど働きました。ちょうど日本が外国人労働力の受け入れを積極的に進めることとした時期で、地方自治体に多言語相談窓口の設置や地域日本語教育の取り組みが求められていました。入職後半年も経たないうちにコロナ禍となり、長年ボランティア活動を行ってきた方々のオンライン活動継続支援等を、さらにその2年後にはウクライナ避難民支援に取り組むこととなりました。これまで研究してきた地域福祉や多文化ソーシャルワークを、まさに現場で実感し、実践する日々でした。
私の現在の研究テーマは「地域福祉」と「多文化コミュニティソーシャルワーク」です。日本に暮らす外国につながる方々にとって、同じ国・地域出身者で構成されるエスニック・コミュニティは心強い存在です。しかし、私たちは一人ひとりが多様性を有しているので「日本人—外国人or〇〇人」といった軸のみでコミュニティを捉えるのはもったいないと感じます。同じ地域に住む住民として、大学生として、同じ趣味を持つ者としてなど、共通点に目を向けることで、私たちはもっと多様なコミュニティを形成しうるし、そこに自分自身もありうるのではないでしょうか。コミュニティが複層的に存在し、一人ひとりが多様なコミュニティにありうる社会であれば、人はより柔軟にアイデンティティの多様性を受け止めることができ、自分のことも相手のことも大切にできるようになる、研究・実践を通してそのような社会を目指したいと思っています。
こうした考え方にたって現在、「多文化コミュニティソーシャルワーク」の概念化と、必要とされる価値・知識・スキルの具体化と体系化を検討しています。右傾化する社会の中で、私たちは何を大切に生きていくのか、どのような価値や理念を共有し社会に働きかけていくのかが問われています。海外で議論されているカルチュラル・コンピテンスやマイクロアグレッション、ホワイトネス、交差性といった概念をただ学ぶだけでなく、日本型の指標や方法を地域での実践を通して見える形にしていく必要があります。さらに、多文化共生からより射程を広げ、多様な主体がともにあるための地域福祉実践という視点で取り組んでいます。
学部での教育活動
担当している学部科目のうち「多文化ソーシャルワーク論」では、2・3年生を中心に、初盤で文化や異文化間コミュニケーション、日本に外国人が暮らすようになった歴史的背景などを学びます。中盤では現場で活躍する方々の話や事例を通して、多文化共生や多文化ソーシャルワークの本質を考え、終盤ではグループワークによる事例検討や企画立案を通して、実践のプロセスを模擬体験します。
「キャリア形成演習」では、自身のライフ(人生)をどう送りたいかを考察し、ライフプランニングを通してキャリアプランニングを行います。自分が大切にしている価値を対話や発表を通して深め、社会の多様性と課題に対して自分がどう関わっていけるかをフィールドワークやゲストスピーカーの話から考えます。PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)を通して課題にアプローチし、自身の強みを育てていきます。写真は4グループのうち1グループが、ユッカの会でBBQ企画・実施に参加したときのものです
いずれの科目でも大切にしているのは、「誰かを助けてあげる」のではなく、コミュニティにおいて対等な関係で「ともに学び合い、多文化共生社会を創りあう」視点です。
また、これまでの人生での経験、大学生活での関係性や経験の広がりと深まりが、今後の一人ひとりのライフ(生き方)につながっていくことを願って、「こんな視点もありかも」「そんな考えもあるんだな」といった気づきの機会やきっかけづくりを大切にしています。学生時代に得た気づきは、まだ芽が出ていない種かもしれませんが、ぜひたくさんの種を受け止めて、自分の中に大切に寝かせておいてほしいと思っています。最近では、卒業生や講座の受講生と数年後に再会する機会も増えていて、当時の学びや経験の種が多様に育っていることを知ると、とてもうれしく、また心強く感じています。
今年度は初年度ということもあり、まだ指導を行っている学生はいませんが、卒業論文については、多文化共生、多文化コミュニティソーシャルワーク、地域福祉実践、NPO・ボランティアの機能と役割といったテーマに関心のある学生を歓迎しています。政策調査やインタビュー調査を希望する学生、PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)を通した成果物の作成なども考えられます。先行研究を踏まえつつ、フィールドでの実践や調査を通して見える現実をどのように論じることができるのか、共に取り組みましょう。
「キャリア形成演習」では、自身のライフ(人生)をどう送りたいかを考察し、ライフプランニングを通してキャリアプランニングを行います。自分が大切にしている価値を対話や発表を通して深め、社会の多様性と課題に対して自分がどう関わっていけるかをフィールドワークやゲストスピーカーの話から考えます。PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)を通して課題にアプローチし、自身の強みを育てていきます。写真は4グループのうち1グループが、ユッカの会でBBQ企画・実施に参加したときのものです
いずれの科目でも大切にしているのは、「誰かを助けてあげる」のではなく、コミュニティにおいて対等な関係で「ともに学び合い、多文化共生社会を創りあう」視点です。
また、これまでの人生での経験、大学生活での関係性や経験の広がりと深まりが、今後の一人ひとりのライフ(生き方)につながっていくことを願って、「こんな視点もありかも」「そんな考えもあるんだな」といった気づきの機会やきっかけづくりを大切にしています。学生時代に得た気づきは、まだ芽が出ていない種かもしれませんが、ぜひたくさんの種を受け止めて、自分の中に大切に寝かせておいてほしいと思っています。最近では、卒業生や講座の受講生と数年後に再会する機会も増えていて、当時の学びや経験の種が多様に育っていることを知ると、とてもうれしく、また心強く感じています。
今年度は初年度ということもあり、まだ指導を行っている学生はいませんが、卒業論文については、多文化共生、多文化コミュニティソーシャルワーク、地域福祉実践、NPO・ボランティアの機能と役割といったテーマに関心のある学生を歓迎しています。政策調査やインタビュー調査を希望する学生、PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)を通した成果物の作成なども考えられます。先行研究を踏まえつつ、フィールドでの実践や調査を通して見える現実をどのように論じることができるのか、共に取り組みましょう。
実践的な取り組み
私にとって大事なのは、フィールドでの実践です。出会いや気づき、積み重ねが自身の研究の問いと結びつき、検討や考察を深めていくプロセスを重ねてきました。
この数年は「多文化高齢社会ネットかながわ(TKNK)」での活動に取り組んでいます。地域で多文化共生の活動に関わる市民、外国につながる方々、社会福祉士、介護福祉士、日本語教師など、多様な経験やフィールド、専門性を持つメンバーや協力者と共に、安心・安全に年を重ねられる地域を目指して、調査や講座、ワークショップ、情報ポータルサイトや資料作成などを行っています。
この数年は「多文化高齢社会ネットかながわ(TKNK)」での活動に取り組んでいます。地域で多文化共生の活動に関わる市民、外国につながる方々、社会福祉士、介護福祉士、日本語教師など、多様な経験やフィールド、専門性を持つメンバーや協力者と共に、安心・安全に年を重ねられる地域を目指して、調査や講座、ワークショップ、情報ポータルサイトや資料作成などを行っています。
多文化共生に関わる活動は2000年頃から始めていて、学習支援、日本語学習、多文化キャンプ、やさしい日本語での情報誌作成、多文化ソーシャルワーク講座の企画実施など、様々な実践を重ねてきました。地域コミュニティ、当事者コミュニティ、そして多文化共生のコミュニティをどう形作っていけるのかが、実践・研究いずれにおいても私の柱となっています。
博士後期課程から社会福祉学の道へと進んだのも、一人ひとりと向き合うことの大切さを感じたからです。ボランティア活動を通して市民活動の意義を実感すると同時に、政策化し制度を整えることで、必要な時に必要な人が適したサービスを利用できるようになることの重要性を強く感じました。
写真は、多文化の背景を持つ方たちに協力いただいて認知症456(すごろく)※体験と意見交換。写真は Siempre GENKIの活動にいらした日系人の方たち。
※水戸市作成のオリジナル版をもとにTKNKで「神奈川✕やさしい日本語版」を作成。
博士後期課程から社会福祉学の道へと進んだのも、一人ひとりと向き合うことの大切さを感じたからです。ボランティア活動を通して市民活動の意義を実感すると同時に、政策化し制度を整えることで、必要な時に必要な人が適したサービスを利用できるようになることの重要性を強く感じました。
写真は、多文化の背景を持つ方たちに協力いただいて認知症456(すごろく)※体験と意見交換。写真は Siempre GENKIの活動にいらした日系人の方たち。
※水戸市作成のオリジナル版をもとにTKNKで「神奈川✕やさしい日本語版」を作成。
受験生へのメッセージ
池袋の社会デザイン研究科(当時は21世紀社会デザイン研究科)の修士課程から、東洋大学の博士後期課程に進んだ院生時代にかけて、毎週のように新座キャンパスを訪れて調査や研究を進めていました。学部学生のゼミ合宿にも参加させていただき、コミュニティ福祉学部の学生の多様性や柔軟性、福祉への思い、人との関係を大切にする姿勢に学ぶことが多くありました。また、留学生との日常会話や議論も非常に興味深く、国や地域ごとの文化や制度、価値観の違いを実感する日々でした。教員として通っている現在も、同様のことを日々感じています。他大学ではなかなか学べないテーマを専門としている先生方も多く、幅広くかつ深く学べるのも本学部の魅力です。
福祉の学びは、どのような領域で働いたとしても、また日々の生活のあらゆる場面においても活きてくるものだと実感しています。一人ひとりの、そして地域での安心・安全な生活、幸せと感じられる状態を目指すための価値であり、知識であり、スキルです。より大きく、国や世界の平和に向けたアプローチについても考える4年間になることでしょう。ぜひ、他大学にはまだ少ない「多文化ソーシャルワーク論」も受講し、日本でともに生活を営む外国につながる方との共生のあり方を一緒に考えていけたらと思います。
また、大学院での学びはいつからでも、何歳からでも遅すぎることはありません。社会に出て様々な経験を重ねたからこそ見えてきた課題や、ずっと取り組み続けたいテーマを仲間と共に理論的に深めていけるのが、博士課程の良さでもあります。
自然が豊かなキャンパスで、自身の価値を大切に育みながら学内・学外の様々なことにチャレンジする学生生活を送り、卒業後も続く仲間としてゆるやかなネットワークに加わっていただけたらうれしいです。
福祉の学びは、どのような領域で働いたとしても、また日々の生活のあらゆる場面においても活きてくるものだと実感しています。一人ひとりの、そして地域での安心・安全な生活、幸せと感じられる状態を目指すための価値であり、知識であり、スキルです。より大きく、国や世界の平和に向けたアプローチについても考える4年間になることでしょう。ぜひ、他大学にはまだ少ない「多文化ソーシャルワーク論」も受講し、日本でともに生活を営む外国につながる方との共生のあり方を一緒に考えていけたらと思います。
また、大学院での学びはいつからでも、何歳からでも遅すぎることはありません。社会に出て様々な経験を重ねたからこそ見えてきた課題や、ずっと取り組み続けたいテーマを仲間と共に理論的に深めていけるのが、博士課程の良さでもあります。
自然が豊かなキャンパスで、自身の価値を大切に育みながら学内・学外の様々なことにチャレンジする学生生活を送り、卒業後も続く仲間としてゆるやかなネットワークに加わっていただけたらうれしいです。
※インタビュー当時の情報です。